京都芸術大学(KUA)の芸術史講義アジアを受講中です。
この記事では、受講した感想やおすすめの参考文献、レポートの注意点などをご紹介します。
【記事執筆時点での芸術史講義受講状況】
単位修得済:アジア1・3
受講中:近現代1・3
2022年度中に受講予定:アジア2・4、近現代2・4
2023年度に受講予定:日本1~4、ヨーロッパ1~4
※レポート課題の「問題文」は外部公開NGなので、レポート本体だけを公開しています。※年度が変わると色々変更が入る場合があるので、参考程度にご覧ください。
芸術史講義アジアの受講の順番は?
芸術史講義は全科目で春秋は1・3のみ。
夏冬は2・4のみ受講可能です。
そこで迷うのが受講順ですが、私はパターンA↓で受けてます。
いずれも1と3が基本編、2と4が応用編的な内容。
Aだと基本編をまとめて受けて、次の期で応用編をまとめて受けるような感じですね。
パターンA
・参考文献をまとめて調査しやすいので、あまり頻繁には図書館に行けない方におすすめ。
・受講地域に集中でき、頭の切り替えが少なくてすむ。
・半年で1~4まで終わるため、専門用語や登場人物など、キーワードを最後まで忘れにくい。
パターンB
・一点集中は飽きる!という方におすすめ。
・造形基本→造形応用→上演基本→上演応用、といった流れになり、テキストの繋がりが自然。
・歴史的に、地域同士の比較がしやすく楽しいらしい。
どちらもメリットがあるし、受講順に制限はありません。
履修登録不要の科目なので、とりあえずアジア・日本・近現代・ヨーロッパのそれぞれ「1」を覗いてみて、興味の持てた科目を受講する…なんてスタイルもアリです。
芸術史講義アジア、テキスト買うべき?
入学してすぐ悩みがちな、「テキストは電子か紙かどっちにするべき?」問題。
これについては、内容は同じなので「使い勝手が好みな方」でOK!
電子は大学のマイページで無料で閲覧できるので、まずは「教材BOX」から確認してみてください。
もしそれで使いにくいようなら、紙版をAmazon等で各自購入するか、図書館で借りるか。(中古は市場在庫常に少なめ&あまり値崩れしてないですが…あればラッキー)
パソコン上でノートを取りたい方はテキストも電子書籍で、手書きノートを取りたい方はテキストも紙、という選び方もおすすめです。視線の移動が少なくて済みます。
特に電子だと動画と一緒に1ページ目から順番に見ていきがちなんですが、最初にざっと巻末をチェックするのがおすすめです。
年表や地図が載っていて便利!
マイページの無料電子書籍はマーカーも引けるけど、数に上限があって古いものから消えていくらしい…というウワサ。
私は電子版がどうにも使いにくくて、最寄り図書館にもテキストがなかったので、紙の書籍を購入してます。
章末テスト(選択式の、受講中に何度でも受けられるミニクイズのようなもの)は「テキストにしか載ってないこと」から出題されることも多いので、テキストと動画の併用は大前提です。
紙の本を買うなら、
Amazonの学割「Amazon Prime Student」がお得。
3冊以上購入で10%ポイントバック。結構大きい!
(ついでにAmazonのクレカ作っておくのもおすすめです。年会費無料。)
芸術史講義アジアを受講した感想
入学してすぐの1回生前半に受講した芸術史講義アジア。
「アジア」というくくりですが、主に中国の芸術史です。
芸術史講義アジア1
中国の古代から明清時代に至るまでの芸術史。
初年度の春期に受けてよかった。と思った科目。というのも、内容を理解する以前に、漢字が難解すぎて!
ことごとく読めない、書けない、変換できないで、モチベーション高い時じゃないと受けきれなかっただろうなと思いました。
でも映像がすごく綺麗なので、受講は楽しかったです!
手書きノートとると無限に時間がかかりそうで、パソコン上(Evernote)でメモをとりました。
レポートはテキスト読むだけでも書けるかもしれない。
中国史に詳しい人はもっと楽しめるんだろうなと思ったし、歴史にも興味が出てきて、漫画版の「史記」を読んだりしました。
芸術史講義アジア3
中国の文学、音楽、舞台芸術についての古代から19世紀までの流れ。
章末テストは、動画にはない問題が多かった印象です。
とりあえず課題を知りたい人は、テキストの各章、最初と最後だけ見ながら章末テストクリアするのが早いかもしれません。
音楽・舞台芸術の話が多い科目なので、実際の音や映像も一緒に&何度でも学習できるのはオンラインならではのメリットだなと感じました!
芸術史講義アジア レポート課題公開
アジア1のレポート課題
評価:A 80点
私は指定期間のアジアの芸術史をまとめたレポートを提出しました。
長い長い中国の歴史、指定の文字数に凝縮するのは大変でした…!基本的にひとつながりの話なので、段落を変えるタイミングに悩みました。結局正しいのかはわかりませんが、合格できて良かったです。
新石器時代の、世界最古の彩文土器が「彩陶」である。殷の時代には、青銅器が出現。饕餮文と雷文で飾られた《司母戊鼎(后母戊鼎)》は、現存する青銅器の中で世界最大のものだ。その後、西周時代には文様の簡略化が進み、祭器から実用品へと主用途が変化した。後期の《毛公鼎》は、内側に497文字の銘文が刻まれている。
春秋戦国時代には地域ごとの多様性が顕著となる。「曾侯乙墓」からは、漆器と青銅器が出土。当時の最先端技術「蝋型鋳造法」で作られた《編鐘》は古代中国の打楽器だ。北方ではオルドス青銅器文化が栄え、西方美術の影響が見受けられる。また「象嵌」と呼ばれる技法が発展。《緑松石象嵌獣面文飾金具》はトルコ石の象嵌が施された青銅器だ。
秦時代の芸術品は、墓からの出土品が多く残り、当時の死生観が見て取れる。巨大な墳丘、秦の始皇帝陵から出土した7,000体を超える明器の軍隊「兵馬俑坑」は、写実性が高く、実在の近衛兵がモデルだと考えられている。貴族文化が繁栄した三国・南北朝時代には、絵画・書画が芸術として成立した。三国時代では顧愷之の《女史箴図巻》や、王羲之の書《蘭亭序(神龍本)》が有名である。後漢時代から南北朝時代にかけて仏教が伝来、寺院建設にともない、中国式仏像が現れる。中国式服制の袈裟が特徴的だ。中国三大石窟と呼ばれる石窟が生まれ、優れた石窟美術が発展した。
隋時代、随文帝の仏教復興政策など国家の後押しにより、仏教美術は成熟期を迎えた。初唐時代にはインドから新たな仏教様式が伝わり、盛唐時代には西方の影響で写実主義が完成した。永泰公主墓から出土した壁画のひとつ、《女待図》は、当時の宮廷の女性たちが描かれている。五代・北宋時代になると、水墨を用いた写実的で普遍的な山水画が確立された。《早春図》は名前の通り雪解け頃の山の表情が描かれた、郭煕の代表作である。後景・中景・近景と均等に三分割された空間構成が見事な作品だ。南宋時代には、宮中の「画院」に属する宮廷画家たちが活躍した。皇帝の好みにあわせて発展した「院体」と、禅僧や庶民の間で好まれた「墨戯」の対比が特徴的である。代表的なものに、院体では李迪の《紅白芙蓉図》、墨戯では米友仁の《雲山図巻》などがあげられる。宋時代、中国陶磁器は黄金時代を迎える。窯場の急増とともに、陶磁器の生産量も増加。品質向上・技術革新につながった。個性豊かな陶磁器のうち、天目碗《曜変天目茶碗》は現代日本では国宝に指定されている。
モンゴル人に征服された元時代には、宮廷画院が存在しない。趙孟頫は「古意」を作画理念に掲げ、書画の制作にいそしんだ。《鵲華秋色図》には趙孟頫の懐古主義が色濃く示されている。また元代後期には「元末四大家」と呼ばれる4人の画家があらわれた。彼らの作品は明代以降の山水画にも大きな影響を及ぼしている。最後に、明・清時代、絵画の多様化により各地で都市画壇が形成された。この時代の工芸技術の高さは、さまざまな作品に残されている。《翠玉白菜》は素材である翡翠本来の色を活かし、写実的に彫り上げられ、現代でも愛され続けている。
註・参考文献
・馮先銘, 鄧白, 弓場紀知著『中国美術全集1~3 工芸編』京都書院、1996年
・濱田瑞美編『アジア仏教美術論集 東アジア1』中央公論美術出版、2017年
アジア3のレポート課題
評価:A 80点
文学から「唐代の伝奇小説」をテーマにレポートを書きました。アジア1で広い期間をまとめるのに苦労したので笑、テーマ選定の段階でできるだけ絞りました。
同時に受講していた中では「演劇」をテーマにされた方が多かったそうですよ。
唐代伝奇小説の発展について
伝奇とは、唐代の文学ジャンルのひとつである。当時他の文学には見られなかった、男女の愛情に正対する作品が多数創作された。また「奇」の文字が示すように、神仙や幽霊が登場する作品が多い点も伝奇の特徴である。伝奇が広く愛され発展した理由を、当時の社会的な背景を踏まえ述べていく。
唐は三百年もの間、天下を保ち続けた。「漢唐盛世」と称されるほど、文化、産業、経済などにおいて繁栄を誇った封建社会である。国家が豊かになったことで人々の生活は安定し、言語芸術も新たな発展を遂げたのだ。伝奇は六朝時代の「志怪」小説の流れをくみ、志人小説や史伝小説の要素も取り込みながら、唐の時代に「伝奇」小説へと発展した。「奇」なる話が、科挙を志す若者や士大夫階層の知識人たちが集う場で語られ、伝わり、記され、小説として円熟したのである。その為、当時の宗教的な流行である仏教・道教も作品に影響している。
初唐の作品では、張鷟の《遊仙窟》は日本へと伝わり、『万葉集』にも登場した。主人公が仙窟に迷い込み、美女と出会う物語である。中唐期以降、古文運動と競いあうように、より精力的に作品が生み出された。古文運動と伝奇の関連性について、『唐伝奇入門』には以下のように記されている。
「この運動は思想の開放に始まり、文章の変革をもたらしたと言えよう。伝奇との関連で言えば、古文運動は伝奇に暢達な文体と表現力ゆたかな言葉を提供し、逆に大量のすぐれた伝奇の創作は運動を促進させるはたらきをしたのである。」[註]
このように、古文運動と伝奇の創作は相互に作用し、唐の文学は進展していった。
中唐期の著名な作品には、白行簡の《李娃伝》、蒋防の《霍小玉伝》、元稹の《鶯鶯伝》などがある。《李娃伝》《霍小玉伝》は共に、若い男性と遊女の恋愛を描いている。《鶯鶯伝》は主人公と美しい令嬢の恋愛物語で、仲介者の侍女を交え話が進む。いずれも主人公は科挙を目指す、もしくは科挙に合格した優秀な男性であることも、伝奇の制作背景を反映している。
多数の伝奇が生み出されると共に、伝奇集が編み出された。牛僧孺の『玄怪録』、それを真似た李復言の『続玄怪録』などがある。牛僧孺は武宗の宰相にまで上り詰めた、大きな権力を持った政治家であった。そういった政治家が自ら伝奇集を編んだことからも、唐代における伝奇の状相が見て取れる。晚唐にはさらに多くの伝奇集が編まれ、唐滅亡の年には皇甫枚が『三水小牘』を残している。
唐滅亡の後も、伝奇は後世の雑劇や小説などに大きな影響を与えている。例えば、白行簡の《李娃伝》は宋話本の《章亜仙》、元の《曲江池》雑劇、明の《繡襦記》伝奇へ。元稹の《鶯鶯伝》は語り物の《商調蝶恋花》鼓子詞へ、そして元曲雑劇の代表作とも言われる王実甫の《西廂記》が生まれ、広く愛された。
註・参考文献
[註]
呉 志達『唐伝奇入門 中国古典入門叢書9』赤井益久 訳、日中出版、1985年、三十ニページ
[参考文献]
・赤井益久『唐代伝奇小説の研究』研文出版、2021年
・小南一郎『唐代伝奇小説論 悲しみと憧れと』岩波書店、2014年
芸術史講義アジア おすすめ参考文献
「アジア1」で紹介されていたのが、こちらの3種。
↑こちら中古相場がかなり安い!
(記事執筆時点)ので、最初に買っちゃっても良いと思います。
特に最後の「世界美術大全集」シリーズ(全18巻)は、スタート地点としておすすめとの事。
全18巻の内、知りたい分野の巻を見て、巻末の参考図書からさらに興味のあるジャンルの文献へ…、という手順。
アジア全般でいうと、私のおすすめは中国美術全集シリーズ。
テキストや動画で紹介されていた作品を大きな印刷媒体で見られる&解説も面白かったです!でかくて重くて高いので、お近くの図書館にあればぜひ~。
芸術史講義アジア レポートで注意したいこと
とにかく漢字が多い科目なせいか、変換ミス・別の漢字と取り違えている、という単純な減点が毎年あるそうです。「隋」と「随」とか。
レポート提出前に要チェック!
芸術史講義アジアのまとめ
まとめ…と言ってもまだ1・3を受講しただけなので、次期で2・4を無事受講できたらまたこの記事を更新しますね!
最後まで見てくださってありがとうございます。